聴覚障害者にも「実況・解説」をリアルタイムで楽しんでもらいたい~手話通訳・橋本一郎さん

6月29日から7月2日まで東京体育館で行われた、車いすラグビーの「三井不動産 2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ」。世界ランク3位の日本が、昨年の世界選手権で金メダルを獲得した強豪のオーストラリア(同1位)のほか、韓国とニュージーランドを迎え、4ヶ国が4日間の熱戦を繰り広げた。日本は見事全勝優勝し、パリへの切符をつかみ取った。

キャプテンの池透暢と世界ナンバーワンプレーヤーと称されるオーストラリアのライリー・バット 写真・秋冨哲生

この大会では優勝した1ヶ国がパリパラリンピックの出場権を得るということもあって、白熱した試合が行われたうえ、観客も大勢詰めかけ、にぎわった。

その中でも目を引いたのが、「手話通訳優先席」。聴覚障害のある観客向けに手話通訳者がスタンドでリアルタイム解説を行うという、車いすラグビー初の試みだった。

解説を務めたのが、手話通訳者の橋本一郎さん。

手話通訳者の橋本一郎さん 写真・秋冨哲生

ろう学校の教師としての経歴があるほか、東京パラリンピックはもちろん、さまざまなパラスポーツの現場やイベントにも携わってきた。これまでもパラスポーツの会場に聴覚障害の友人や生徒と一緒に訪れ、手話で説明している。そんな橋本さんに今回、日本車いすラグビー連盟が手話通訳を依頼したということだ。

想像以上に集まった手話通訳優先席 写真・秋冨哲生

試合中は車いすラグビーの基本的なルールのほか、選手たちのタイムマネジメントやファウル、タイムアウトなど、さまざまな状況を橋本さん自身の手話で説明していた。また、スタジアム実況や解説の話している内容を伝えるなど、「今起きていること」を瞬時に通訳していた。

30席を予定していた手話通訳席だが、実際には100人以上が橋本さんの手話通訳を見ながら試合を楽しんでいたというう。

実際に応援していた聴覚障害のファンは、「今までは実況が会場を盛り上げていても、聞こえないのでついていけなかった」と話す。

橋本さんは、「ルールがわからなかったという人にも喜んでもらえたし、通訳がいるから来ましたという人もいた。ただ手話通訳ができるだけではなく、僕自身が車いすラグビーを好きだから、ルールを伝えることができてよかったです。またこういう機会が増えたらいいですね」と振り返った。

来年のパリパラリンピックでは金メダルを! 写真・秋冨哲生

来年はパリパラリンピックも控えている。車いすラグビーに限らず、「観戦のノーマライゼーション」が広がっていくことを期待したい。

(取材:PARAPHOTO


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